一般社団法人日本モダンガール協會代表の淺井カヨによる個人ブログ©️KAYO ASAI
筆者
連載第12回「週刊モガ」 新淑女不惑レポオト
全國のモダーン・ガール諸姉!
大變長らくお待たせ致しました。
今週の「週刊モガ」を始めたいと思ひます。
暫く更新が出來ませんでしたので
隨分ご無沙汰してしまひました。
樣々な場所へ出掛けましたので
そのお話も幾つか致しませう。
殿方も、どうぞご覽遊ばせ!
新淑女の淺井カヨがお送り致します。
今週は、モダーンなボオイ・フレンドの
御誕生日に花束をお送りしました。
これで3年目です。
どんな御方かは後で申しませう。
どうぞ最後までお附き合ひ下さいまし。
先月、岐阜縣明智町日本大正村にて
或るご老人から
「御歳は幾つ。」と尋ねられました。
冗談の積りで、
「大正生まれです。」と申しましたら
「え、ほ、本當に、、、。」と云ひ乍ら
私をぢつと見つめて、
暫く沈默に成つてしまひました。
すると隣に居たお孫さんらしき方が
「おぢいちやん、
この方大正生まれなわけないでせう!」
と仰るので、
「ご免なさい。本當は昭和です。」
と訂正致しますと、
優しい眼をしたご老人は、また私の顏を覗き込んで
こちらをただぢつと見てゐるのでした。
若しも、私が大正14年に生まれたとしても
今年で83歳であります。
所變はりまして、S縣S市立博物館にて
音響の歴史に關する企劃展を拜見致しました。
蝋管式蓄音機(エジソン・スタンダード・モデルB)
ポオタブル蓄音機(HMV102)
鉱石ラヂオに、眞空管ラヂオなどの展示も
有りました。此處に展示されてゐた
ポオタブル蓄音機は、私にとつて身近な物なので
過去ではなく現代に思へました。
逆に、昭和後期のポータブル・ステレオが
大變古めかしく見えて仕方がありませんでした。
その上、尤も古い展示である筈の蝋管式蓄音機が
新しく見えまして、
個人にとつての歴史とは、
必ずしも一方方向だけに
流れてはゐないのだなと感ぜずには
居られませんでした。
昔の事物が新しく見えたり、
現代の事物が古く見えると云ふことが
幾らでもあると云ふことです。
さて、先日のことですが
本物のモダンガールの
お話を聞くことが出來ました。
某演奏會の終演後、偶々近くの
席にいらしたAさんに初めてお目に
かかりました時のことです。
お祖母樣が、モダンガールであると云ふ
お話を偶然に聞くことが出來ました。
私の經驗から申しますと、
實際にお話を伺ひますと
モダンガールではないと云ふことも
多々あります。然し、其のお祖母樣の
お話を聞いて居りましたら、本物の
モダンガールである事が如實にわかりまして、
それは、飛び上がる位嬉しかつたのですよ!
Aさんはお祖母樣のお話を、たくさんして呉れました。
當時、女性は三文字の名前がモダーンであつた事。
(因に私がカヨと名乘つてゐるのは、
明治の女性を意識してゐるからであります。
本名は同名の漢字に子が附くだけです。)
女はベルトを締めて、
シーム入りのストッキングを履く事。
(此れですよ!)
洋裝に就いては、たくさんの物を持つよりも
少ない物から如何に
組み合はせるか、徹底的に考へる事。
(さうです!)
銀座は表通りよりも裏通りを歩く方がモガとして格好良い事。
(此れは知らなかつたなア。)
Aさんからは、また是非
お話を伺ひたいなアと思つて居ります。
此處でまた、モダーン・ガール諸姉に
ご報告出來たら嬉しいです。
それから、横濱の馬車道驛構内にて開催されました
「横濱モボ・モガを探せ!」展へ友人と參りました。
當時の冩眞を一同に見られるとても良い機會でした。
いつもの如くモダンガールのファッションに、
冩眞を観る為、黒のロイド眼鏡(丸眼鏡)を掛けました。
二階會場は、一階改札口から吹き拔けに成つて
居て、下方から不思議さうにちらちらと
こちらを見てゐるお客さん達が居て面白かつたです。
冩眞のモガもほぼ同じ黒のロイド眼鏡を掛けてゐました。
モボ・モガの冩眞展で當時風モガが熱心に觀て居たのは、
傍から見たら可笑しな光景だつたかもしれませんネ。
その後馬車道十番館へ參りました。
馬車道へ來る時は必ず立ち寄ります。
明治の西洋館を再現したキャフェでありまして、私の
お氣に入りの場所の一つです。竝びの勝烈庵もお薦めです。
私はクリスチャンではありませんが
寒い時候に成ると、賛美歌が聽き度くなるので
毎年音樂會へ出掛けて居ります。
しかし、編曲されたをかしなクリスマス・ソングが
大の苦手である私は、26日迄はあまり繁華街へ
出掛けないのが常であります。
お誘ひ受けて、パリ木の十字架少年合唱團の
美しい歌聲を聽きに聖堂へと出掛けました。
少年合唱團の歌聲は迚も美しかつたです。
ただ、最後の曲が某有名歌手の
クリスマス・ソングの編曲で
原曲とは全く變はつて居りましたが、もつと
昔の日本のよい曲を歌つて欲しかつた所存であります。
聖堂近くの椿山莊で、
能登・輪島觀光物産展がありました。
金沢蓄音機館に就いて尋ねましたが、
わからないと云はれました。
歸り際に、地圖を片手にした係員が慌てて
此方へやつて來て、
「有りました!金沢蓄音機館!」と
丁寧に教へて下さいました。
金澤へはもう隨分長い事訪れてゐないのですが
印象的で、空氣の良い街だつたので
一寸出掛けてみようかしらと思つてゐる所です。
高校生の頃は、「美大の下見へ參ります。」と言つて
「たま」のライブを觀に行つたり、
大學受驗の一次試驗と二次試驗の途中で、
「風と共に去りぬ」の全篇を
宿から観に出掛けたりして居りました。石川縣立美術館で觀た
鴨居玲の繪も強く印象に殘つて居ります。
11月から12月に掛けて一等嬉しかつた事は、
音樂史研究家でSPレコード復刻技術者でいらつしやいます
郡修彦氏とお會ひ出來た事でせう。
世の中には凄い方がいらつしやるものだと
本當に感心して居ります。
小さな頃から戰前文化の良さを見拔かれ、
眞實を追求される姿勢が半端でなく徹底していらつしやいます。
戰前のお話で言へば、
當時の方よりも詳しくご存知である事も
多い位で、私は背筋が伸びる思ひであります。
愛宕山のNHK放送博物館にて
「SP盤で聴く名歌手たち」と云ふシリーズで
復刻音源と素晴らしい解説を聽くことが出來ました。
以前にもご紹介致しましたが、私は日本文化チャンネル桜の
「探訪SP盤の世界」と云ふ番組のファンであります。
郡氏の解説は、當時の世相なども
適時に織り込まれていらつしやいまして、
とても樂しいです。
武藏小山のLive Cafe Again
でも毎月SP盤の音源(CDに落とされたもの)と解説
を聽く會(ほのぼのSP講座)を開催されていらつしやいます。
前囘は、戰前・戰中の珍しいコミックソングを聽くことが出來ました。
ある曲に、モダンかけおちと云ふ歌詞が出まして
一體、モダン驅落とはどんな風だつたのだらう、と
想像してしまひました。
驅落とは昨今あまり聞かなくなりましたネ。大體、700系新幹線で
驅落しても、情緒がありませんもの。
途中で、ゴオ・ストップgo stopと云ふ言葉が出まして
店主の石川氏より
ゴオ・ストップを流行らせよう!
と云ふ言葉が有りまして、非常に面白かつたです。
ゴオ・ストップとは、信號機のことですが
明解國語辭典(昭和18年)には、
十字路などの交通信號器と書かれて居ります。
モガは此れから、
信號機ではなくゴオ・ストップと云はう
と思ひます。他にも、
ウルトラultraと云ふ言葉も流行つたさうです。
此れも當時の辭書によりますと、超、過度(極度)の、と云ふ
意味ですネ。超~、と云ふよりもウルトラ~、と云つた方が
モダンだと云ふことです。
郡氏曰く、戰前は定期劵のことをパスと云つたさうで
此れも面白い言ひ方ですネ。
其れから、こだはると云ふ言葉は
今でこそ良い意味に使はれてゐますが
本來の意味は、あまり芳しくないと云ふのも
興味深かつたです。
1・さしさはる。2・かかづらふ。3・わづかの事に故障を言ふ。
(明解國語辭典・昭和18年)
かうやつて當時の辭書を次々と引いていくのは
非常に面白いです。
言葉の意味が變はつてゐるものが多いので、
一寸其のあたりの事も調べたいなァと思ひます。
辭書でパスのページを見て居りましたら、他にも
パス・ポオトは、旅行免状。
パスタは、1・捏ねた物。2・糊。3・軟膏。
と有りました。今のパスタの意味に成つたのは
いつ頃なのでせうね。
明解國語辭典初版には、スパゲッティの
表記は有りませんでした。
インタアネットの
キーワードランキングを觀てゐたら
「1位シュレック」と云ふのが、
「1位シェラック」に見えまして、
おお!?
遂に時代が追ひついたか、と思ひました。
此處まで來ると
私はビョーキかもしれないなアと思ひました。
(念の爲、申しますと
シェラックと云ふのはカイガラ蟲に由來する
SPレコードの材料であります。)
「週刊モガ」を書き始めてから、變化が起こりました。
氣が附けば、周りの方々が
皆、合はせて呉れるやうに成つてしまひました。
一緒に出掛ける方の大多數が、
一緒に階段を昇り降りして呉れて
手動ドアを使ひ、私が切符を買ふ時間をぢつと待ち、
マニュアル的な大手チェーン店には入らないで居て下さる。
嗚呼、何と云ふことか!
こんな面倒な人間とよく附き合つて下さるなアと
思ひます。申し譯ない氣分であります。
周りの方を私の生活に
卷き込みたいとは思つて居りませんので、
どうか其の點だけは宜しくお願ひ致します。
ちなみに私と尤も長く附き合ひの或る友人は、
十歳頃に知り合つた同級生ですが
大正時代つて何?と云ふ方でありまして、
同じ趣味だから必ずしも友人に成ると言ふわけでは
ない、と私は思つて居ります。
好きか嫌ひかと云ふよりは、
もの凄く氣に成るか
興味がないかで選んでをります。
コレまアまア好きだから
選んでおかうかしら
と云ふ選擇肢が、私には無いのです。
まアまア好きだなんて、
どうでも良いと
あまり變はらない氣が致します。
人生は短いので、
どうでも良いものに
時間を掛けてゐる暇なぞ
ないのです。
好きか嫌ひかだけの選擇肢に
振り分けてしまふと、其れ以上に
發展しない可能性も強くなるので、
自分の中では今の所は興味がない、に
留めておかうと思つて居ります。
内面がいつも新しくなければ、
モダーン・ガールとは云へません。
過ぎ去つた事を考へて
暗い想念を持つてはいけません。
落ち込む時は、
まあ、極限まで落ち込むでせうが、其処まで行つたら
後はケロッとしなければなりますまい。
「内容さへあれば、年はとつてもする事は新しい、
モダーンである。」
高田義一郎氏「らく我記」より。
では、今週の「週刊モガ」もそろそろ終はりたいと思ひます。
さて、モダーンなボオイ・フレンドと云ふのは、
私にとつて尊敬する御方でありまして
(彼氏では有りませんことヨ。)
大正6年生まれで、91歳。ボルサリーノの中折れ帽を
粹に被つていらつしやる素晴らしい紳士です。
優しい奧樣と共に、
元氣で長生きして戴きたいと願つて居ります。
それでは、今日は此の邊で失禮致します。さやうなら。
次回は早めに更新致しますので、どうぞ宜しく御願い申し上げます。
日本モダンガール協會・淺井カヨ
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■遅ればせながら、
12月7日附の新聞にモガ・モボが掲載されました。
漂うロマン満喫 恵那で大正期ファッションショー
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