一般社団法人日本モダンガール協會代表の淺井カヨによる個人ブログ©️KAYO ASAI
連載第16回「週刊モガ」 謎の洋館、モガ自室公開
めつきり 春らしう なつてまゐりました。
いかゞお過ごしでせうか。
日本モダンガール協會の淺井カヨより
春のはなだよりです。
冩眞は、自室の一部です。
御要望が御坐いましたので
此處に掲載致します。
數名の女史が既に來館して呉れましたが、
初めて來た方は一樣に、
目が點になつて居らつしやいました。
「えー!(何、この部屋!←多分、
かう思はれてゐる事でせう。)」
と云ふ聲を何度も聞いて居りまして、
一寸愉快です。
この部屋には、戰後まもなくの時代に
ハイヒールを履いた女性も
住んでゐたのださうです。何か因縁を感じます。
丸額には、ターキーこと
水の江瀧子女史の
昭和初頭の冩眞を飾つてをります。
モガの憧れ、男裝の麗人であります。
先日、友人が訪問した際には、
「女の60分ネ!」と云はれましたが・・・。
往時の館には、館主と家族、
婆や、看護婦、女中、鳶を着た書生も
住んでゐたのださうです。
今は亡き先代の主に就いて
詳細は此處には記せませんが、
戰前に無聲映畫の活動辯士を
されてゐた事もあつたのださうです。
數年前から、活動冩眞の魅力に
取附かれてゐる私は、何かに
呼ばれたとしか思へないやうな
不思議な氣が致しました。
話はかはりますが私は化粧を落とすのに
現代のクレンジン・クリイムは
一切使ひません。
椿油を化粧紙に含んで、
顏を拭くと大體落ちてしまいます。
石油系化粧品を一切使はないので、
自然の物だけで落とせると云ふことです。
その後に、天然素材の石鹸で
洗ひ流します。
石油系化粧品ですと、
椿油だけでは落ち難いかもしれませんが
御試し下さいませ。
椿油は勿論、髮にも使へますので
可也重寶して居ります。私は
大島産椿油をよく使ひますが、
産地によつても使ひ心地が違ふと思ふので
國産の合ふ物を色々
試してみると良いかと思ひます。
扨て、本題に入りませう。
御陰樣で、當「ウェブログ」は
3月10日に開設1周年を迎へました。
1年間の御聲援を本當に
有難う御坐いました。
此處に感謝を申上げます。
讀んで下さる方が、今後も
1人でもいらつしやれば
續けて行く所存であります。
其の氣持ちは開始當初から
何ら變はりません。
どなた樣にご覽戴いてゐるのかは
全くわかりません。
然し、御顏はわからなくても
讀んで下さる一人一人を想ふと
とても勵まされる昨今です。
身近な方からは、好意的な
「週刊モガ」の感想をよく言はれるので
何らかの影響を與へられた事を
嬉しく思ひます。
まだまだ更新は少ないのですが、
毎回、一所懸命作成して居りますので
若し宜しければ、今後も私と
御附き合ひ下さいませ。
日本モダンガール協會の代表と云へど
何處に屆け出たと云ふわけでもなく、元々
個人的に作つた會でありますから、私は
日本のモダンガールの代表では
決してありません。私が拵へた
日本モダンガール協會の代表である、
と云ふだけのお話です。
假に、現代日本のモダンガール代表だと
思つて呉れた方がいらつしやいましたら、
身に餘る光榮なことですが、私自身は一度たりとも
そんなことを思つた事は有りませんので
どうか誤解をなさらない樣に
御願ひ申上げます。
生活の全ても見直さうとする
現代モガにお會ひした事は、未だ有りませんが
氣持ちは謙虚でゐようといつも思つて居ります。
今後も私は、私なりのモガを追及していくだけで
若し其れを面白いと感じて下さるのならば、
いつまでも傍に居りませう。
私は此處に居りますから、
離れても、追ひかけませんけれど。
第16回目を迎へ、
言葉で表したこちらの意図を
どの程度傳へる事が出來たのかと
改めて考へて居ります。私の
未熟な文章力の故に、まだまだ
傳はつてゐない事も多いのではないかと
感じます。初心に戻つた積りで
今囘は「週刊モガ」を進めさせて戴きます。
初心に戻ると云ふのは、自らへの戒めでもあります。
當たり前の御話で恐縮ですが、
モダンガールは私の專賣特許ではありません。
我こそはモガだと云ふ方は、
どんどん情報發信をされていけば
いいと私は思つて居ります。色々な考へ方の
モガが出て來たら、もつと面白い
世の中に成る事でせう。
私自身は、大正・昭和初頭を
追い掛け乍らも、現代日本で完璧な
當時の再現が出來るとは思つて居りませんし、
其れを完全に行ふのは無理なお話です。
若し其れだけを追ひ掛ければ、
此の「ウェブログ」での發信はおろか
「インタアネット」も完全に止める事に成るでせう。
若し此の「ウェブログ」をやめて、當時の再現に心血を
注ぐやうな方向へ向かつてしまへば、
どんどん内向きの世界へ
沒頭していくことに成ります。私の
中では、モガだから偉いわけでも、
モガでないから偉くないわけでも有りません。
友人で、私から見て完璧な「パンク」の方が居りまして
ある居酒屋へ連れ立つて出掛けた時に
まるで共通項のない二人を見て、店員から
「何故、そんなに違ふ二人が一緒に居るの?」
と尋ねられましたが、大きな共通項が有ります。
其れは、お互ひに中途半端ではない、
と云ふことです。
私は其処に大きな親しみを感じます。
勿論、ファッションのことだけを云つてゐる
話ではありません。
「週刊モガ」は、
現代日本のモガはかうあるべきだ、と
云ふ話では全くありません。私自身が
御仕着せがましい事が尤も苦手です。
何億もの多種多樣な人間が居る中の
一つの生き方を提示してゐるのに過ぎないと
云ふことが一貫した考へです。私は
最早、單なる自分の樂しみで終はるわけには
いかない場所へ來て居ります。
人と自分は違つて當たり前です。
とても初歩的なことですが、
特に迷つてゐる方に對して
傳へ度いと思ひます。
讀んで戴いてゐる方は、
モガ・モボでない方が壓倒的多數でせう。
モガ・モボであつてもなくても、私の意見に對して
讀んで下さる方が、違ふ視點から獨自の考へを
持つきつかけに成れば、此處で私が
自分をさらけ出す意味があると思つて居ります。
一番重要なのは、
どう感じたか、其れによつて
どんな行動をしてみたか、と云ふことです。
年齢も性別も關係ありません。
若いからと云ふことでは
決してないと私は思ひます。
年齢のせゐにする事は好みません。口には
出しませんが、私自身は
さうなつたら終はりだと思つて居ります。
誰に何と云はれようが
どう思はれようが、自分の道を
突き進んでいくだけです。
其れによつて、孤獨に成つたとしても、
私自身が(相手との關係は別として)
一生の中で
大切に思へる人を幾人かあげられたら、
其れは例え私の一生の中で
其の相手と直接關はる事が出來なくても、
一等の喜びを持つて生きていくことが
出來るでせう。其れだけは、
今日まで生きて來て學んだことです。
一人一人とお會ひして、直接傳へる事が
出來ないので、迚も初歩的な
ことでしたが、讀んで下さる方が
勘違ひをされない樣に此處に
敢へて記して置きます。
扨て、一寸お話を變へませう。
本日は銀座七丁目花椿通りの
椿屋珈琲店より認めて居ります。
以前にも記しましたが、
「週刊モガ」は、必ず外部にて
萬年筆で認めてから、
「パアソナル・コンピュウタア」に
内容を打ち込んで居ります。
いきなり機械に向かふと、
何故か筆が全く進みません。
此処の椿屋珈琲店は、
作られた大正浪漫と云ふ感は
若干有りますが、好きな店の一つです。
銀座でよく訪れる喫茶店は、
明治44年創業の
カフェー・パウリスタですが
時々、ウエストの喫茶室へも參ります。
ウエストは原材料までもよく吟味
されてゐるので、
やはり「真摯」な店であると思ひます。
銀座で時間が有ると、よく出掛ける場所が
HOUSE OF SHISEIDOであります。
明治30年發賣の「オイデルミン」から、
歴代の瓶が飾られて居りました。私は矢張り
現代の物よりも、明治、大正の物に惹かれました。
いつも良い展示が觀られる場所です。(入場無料。)
銀座から歩いて東京驛の
中央郵便局まで参りまして、
工事が始まって針が無くなつた大きな時計盤を
下からぢつと眺めて居りました。
此處から見られる風景も此れが
最後かもしれません。
或る夜、友人らとこの時計盤の下で待ち合はせをして
大正時代の大きな革トランクを持つて、東京驛から
旅に出た事を想ひ出しました。
何故か一人の友人が、同じ革トランクを持つてゐて
驚きました。私にとつて
懐かしい想ひ出の一コマです。
二年振りの帝都生活が始まると、
喫茶店へ行くことがまた非常に多くなりました。
先日、引越したら
必ず行きたいと思つて居りました西荻窪驛
南口のDANTE(ダンテ)へ初めて參りました。
昭和40年創業ださうですが、もつと前から
或るやうな氣分に成る良い喫茶店でした。
ELINOR GLYN著の“IT”(イット)を讀み乍ら、
一寸後ろを振り向くと、缺け繼ぎした背廣に帽子を
被つた體躯の良い紳士が坐つて居りました。
なかなか此の店にお似合ひの方でした。
良い店には良い客が訪れますわネ。西荻窪で
よく訪れる喫茶店はこけし屋と
物豆奇(モノズキ)で、物豆奇では
以前から抹茶フロート許り頼んでしまふので
抹茶フロートの人、と私は
思はれて居るのかもしれません。
神保町の喫茶店はさぼうると
さぼうる2へよく參りますが、
タンゴ喫茶ミロンガへ
先日、久し振りに出掛けました。
改めて、昔のタンゴを聽いてゐたら、
やつぱり理屈でなく
タンゴが好きなんだなアと
思ひました。
戰前の歌も、學生の頃は
極有名な曲や歌手位しか
わかりませんでした。しかし乍ら、特に此の數年
個人的に調べたり、樣々な鑑賞會へ足を
運んでゐるうちに、少しづつですが
歌手、作詞家、作曲家、レコードのこと
などがわかるやうに成つて來て、
さうなつてくると、益々レコードを探したり、
復刻版を聽くことが面白くなりました。
螺旋状の階段を登つてゐるやうな氣が致します。
樂しい前進です。
昔の曲だから良いと云う訳ではなくて、
(昔の曲で好みでない物も有りますので。)
良いと思う物が昔のものだった、という事です。
まだまだわからない事許りで、
時々、自分の至らなさを痛切致します。
然しあせつてはいけないと思つて居ります。私は
生涯をかけて此の時代を追ひ掛けるのでせうから、
地道に一歩づつ進んでいくことを考へたいと思ひます。
先日のSP講座での
「聴かずに死ねるか」と云ふ言葉がとても印象的でした。
死ぬまでにどれだけ素晴らしい音樂を
聽けるのか、と考へました。
久し振りに
GYPSY VAGABONZの
秀子孃の唄を聴きたくなつて、澁谷へ參りました。
秀子孃は、1920年代~40年代頃のファッションで
ジャズやオリジナル曲を唄ふ、魅力的な女性です。
「夜な夜なスウィングショー」では、
GYPSY VAGABONZの後に、
GENTLE FOREST JAZZ BANDを初めて拝見しました。
とても良いバンドでした。
20名以上のビッグ・バンドで、若い世代で
かう云ふバンドが出て來たのだなアと思ひました。
猫も杓子も戀の季節で、と云つてゐた
バンドリーダーのお話も面白かつたです。
最寄の驛前では、ストリングス倶楽部が
1930年代のRag Timeナンバアを
演奏して居たので深夜まで足を止めて
聴いて居りました。
SP講座に、ジャズ演奏會に、路上の樂團と
音樂三昧の日曜日でした。
さて、次の日曜日は、活動倶楽部です。
今月は、モボ・モガの時代シリーズで
小津安二郎監督の最初期の作品ですから
都内に来られる方は、是非お見逃しなく!
(詳細は、第15回週刊モガをご覽下さい。)
モガのファッションに
一等興味を持たれる場所は
どこかと申しますと、其れは骨董市であります。
普段は、80年前の洋服を着て居ても
氣が附かない方が多いのですが、
骨董屋は古い物を常によく見てゐるので
どんな物なのか、逆によく質問を
受けると云ふわけです。
味のある店主の骨董屋が好きなのは
骨董品の魅力だけでなく、
其の店主に會つて、話が聞けるからだと思ひます。
大體、お店へ行く時は
あの店主に會ひに行かうと思つて出掛ける事が多く、
基本的に個人商店しか行かない樣に成ると、町の人の
顏がよく見えるやうに成ります。
骨董屋に限らず、何處へ行くにも
そんな風にして暮らして居ります。
日本のモダンガールの洋裝が何着か
纏まつて出た事は、
此の5年間、あらゆる所で探しまはつて來て、
3度だけです。其れでも可也運が良いと思ひます。
1、2着出る事は稀に有りますが、
洋服が一度に何點か出る事は
殆どと言って良い程、有りません。
日本のモガが當時着てゐた洋服を探すことが
如何に難しいか、わかつて戴けるでせうか。
(歐米の洋服であれば、
都内に何軒かヴィンテージの店が有りますので
高價な事が多いですが、入手は比較的簡單です。)
因に日本のモボの洋裝を見つけるのは
もつと難しいのではないかと思ひます。
此の5年間で纏まつて出た所を見た事は
1度も有りません。
纏まって出た3度の洋服は、
横濱のモダンガール、
國立のモダンガール、
目黒のモダンガールが着用してゐた物です。
もう一度申しますが、5年間で3度だけです。
國立のモダンガールが、
亞米利加滯在中に作つたと云ふ洋服も有りました。
目黒のモダンガールは、
大連で作つたと云ふことでした。
これらは全て、當時の特注品で
あるにも關はらず、全ての洋服に於いて
寸法がぴつたりでした。
身長、肩幅、首周りから、腕の長さ、等々
全てが合ふと言ふのは、考へてみたら何て恵まれて
いるのだらうと思ひます。恐らく見つけても
一寸の事で着られない方が多いのではないでせうか。
さう云ふ事もあつて、
單に私事の樂しみだけで、これらの洋服に袖を
通してはいけないと感じるのです。
當時生きていた素晴らしい日本の女性たちを
もう一度省みる事、貴方自身が其れを現代に傳へなさい。
そして、現代社會をもう一度見つめ直しなさい。とでも
云はれている氣分です。
一體、何を訴へかけてゐるのか、私は
此れらの洋服と、此れらに身を包んだ時代の女性たちと
いつも對話をしてゐるやうです。
80年前の洋服で、
80年前の音樂を聽いてゐると、
前の持ち主も聽いてゐたのかもしれないと
ふと思ひます。
着られる物は活用して居りますが
ボロボロになつてゐて、着る事すら出來ない
當時の洋裝も見つけたら必ず入手して居ります。
これらは、復元される事を
待つてゐるかのやうです。
それでは、今囘は此の邊で
お終ひに致しませう。
すてきなはるでありますやうに。
御機嫌よう。
日本モダンガール協會・淺井カヨ
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